実録「時代に生きた歌たち〜All song for 悠〜」



  2007年12月22日、新橋のSOMEDAYにて半田健人スペシャルライブ「時代に生きた歌たち〜All song for 悠〜」が開催されました。ほぼ丸一年ぶりのライブとなった今回は、一曲ごとに解説が挟まれており、単に阿久悠作品を聴くだけでなく、歌詞を味わったり、阿久悠さんのエピソードを聞けたりしました。半田くんの溢れんばかりの歌謡曲愛と阿久悠先生への哀悼。このライブは阿久先生に捧げられたもの、正にfor悠でした。ライブ終了後、僕はライブに来たというよりも、"阿久悠先生を偲ぶ会"に参加したような気分でした。

  今回は阿久悠さんの歌詞を最もストレートに伝えるためにピアノ伴奏のみにして、演奏を「第二回KENT in person」にもスペシャルゲストで参加してもらったテディ池谷さんにお願いしたそうです。テディ池谷さんは美空ひばりさんを教えていたとか経歴が半端ないのですが、鍵盤の魔術師という異名が示すとおり技術も半端ありませんでした。音楽素人な僕でも分かるぐらいにスゴイ。今回、半田くんは歌に専念するため、アレンジはテディさんにお願いしたそうです。例えば「枯葉が落ちる感じで」という無茶振りとも思える(笑)リクエストにも見事に応えてました。また、半田くんが曲の合間にトークしてると、BGMを即興で弾いてくれたりもしました。そして、何よりも半田くんが歌いやすそうでしたね。即興でアレンジしちゃうから、リハーサルとは違ってしまってるのですが(笑)、歌い手を引き立てるような演奏だった…はずです。こんなテディさんと半田くんが、どのようにして知り合ったのか謎ですが、テディさんが公演で東京に来たときは聴きに行き、一緒に食事をするほど親交が深いようです。ステージ上で交わされる二人の会話を聞いていて、これは話が尽きないだろうなあと思わされました(笑)放っておけば、夜が明けるまで語り明かしそうな勢い。そんな中で、テディさんは半田くんのことを盛んに褒め、今回のライブで半田くんオリジナルの曲が弾けなかったのが残念だったようで、いつか一緒に作品を作りたいと言ってました。半田くん自身も、いつかアルバムとか作る時がくれば、そのときはテディさんにお願いしたいと言ってました。
  ここからは、僕の素朴な疑問となりますが、そもそもテディさんはおいくつなんでしょうか?1956年にジャズピアニストデビューだそうですから、20歳頃にデビューだとすると70歳オーバー?それで、あの演奏はバケモノといっても過言ではありません。普通、あんなに指先を動かせません。そして、溢れんばかりのふさふさした頭髪!!70オーバーとは思えない過密な頭髪が、年齢の推定を困難にしてるのです!

  そういえば、渚ようこさんや村上くんが来てました。村上くんが紫ではなくゴールドの服だったのは残念でした(笑)他にも音楽プロデューサーや業界人らしき人がチラホラいたように思います。

  ライブハウスは、ワンオーダーのドリンクを取りに行ったものの、なかなか席に戻れないというぐらいごった返してました。ある程度落ち着いたら照明が落ちて、半田くんがステージに登場。すぐに一曲目の「熱き心に」の演奏が始まりました。半田くんは黒のスーツに、インナーは黒に赤の刺繍があしらったブラウスという装いで、白と黒のストライプのマフラーをかけてたような…。
  セットリストを眺めてみると、半田くんだからなのか、阿久−都倉の作品が4曲で最多なんですね。ライブ前日に半田くんの音楽ブログ「俺の聴きかた」でコーヒーショップを取り上げてたのを読んでいたせいか、何かとコーヒーショップという単語に反応してしまいました。使用頻度が高い単語だったんですね。

01.熱き心に(歌・小林旭/曲・大瀧詠一)
  ♪ああ 春には〜♪ ♪ああ夏には〜♪の部分がいいですね。涙腺が刺激される感じ。また半田くんの声で聴きたい一曲。阿久悠作品にはよくみられるそうなんですが、四季が組み込まれてるんですね。

02.時代おくれ(歌・河島英五/曲・森田公一)

  歌詞に描かれてるような硬派な男がカッコイイと思うしなりたいけど、♪十八番をひとつ 歌うだけ♪は、カラオケ好きとしては無理だそうです(笑)この時だったと思うんですけど、テディさんが半田くんに"もう一回"と声をかけて、サビをもう一度繰り返してました。繰り返す予定はなかったのだけど、ピアノ奏者と歌い手の二人だけなので、その場のノリでこうして臨機応変にできるのが良いところだと言ってました。

03.花のある坂道(歌・大石吾朗/曲・都倉俊一)

  メジャーな作品が二曲続いたところで、ここからマイナーゾーンへ(笑)阿久悠さんが亡くなってから発売された5枚組CDを聴いていて知った作品だそうです。何度も聴いてるうちに好きになったとのこと。どことなく懐かしくなるような歌でした。

04.帰郷(歌・尾崎紀世彦/曲・筒美京平)

  "また逢う日まで"のB面曲。上京してすぐの頃、つまりファイズを撮影していた頃によく聴いていて、よい歌だなあと思ってたそうです。右も左もわからない新しい環境―東京と芸能界―に身をおき、休みもない忙しい毎日の中で故郷を思い出してた、あの頃の気持ちとシンクロしたんでしょうね。

05.思秋期(歌・岩崎宏美/曲・三木たかし)

  阿久悠さんは岩崎宏美さんを育ててるようで、例えば岩崎宏美さんへの提供曲には18歳とか、歌詞に年齢が組み込まれていたそうです。「思秋期」はその集大成のような曲。また、当時のアイドル曲といえば、最重要なのはアイドルを可愛く演出ことであり、歌詞の内容は二の次だった傾向にあったのだけど、阿久さんは内容も拘ったそうです。半田くんによって朗々と歌い上げられるのを聴いて、確かにアイドルっぽくない歌だなあと感じました。

06.教会へ行く(歌・ペドロ&カプリシャス/曲・都倉俊一)

  "五番街のマリー"のB面。昔はA面とB面には差がなく、だからAとBが入れ替わったりすることは多かったそうです。その説明どおり、この曲がA面でも良かったかも。半田くんのボーカルがとてものびやかでした。

07.流されて(歌・チョーヨンピル/曲・金起杓)

  選曲の最終段階で知って、無理を言って加えてもらった作品。半田くんが隠れた名曲と紹介してましたが、僕もそう思いました。メロディがとても美しく、♪流されて〜流れ流れ〜♪が印象的で耳に残ってます。最後の転調でぐっと盛り上がるんです。チョーヨンピルさんといえば"思い出迷い子"しか知りませんでした。また聴きたい一曲であり、僕的にはもっとも気に入った曲かも。

08.サムライ(歌・沢田研二/曲・大野克夫)

  不思議な歌ですね。タイトルからして舞台は日本なのかと思いきや、違うんですね。いきなり"片手にピストル"だし、しまいにはジェニーが登場!「あれ?これはどういう舞台?」と小説に興味を持つのと似た感覚で聴いてました。最も歌詞に興味を惹かれた曲でした。サビがカッコいいですね。僕はジュリーナンバーを歌う半田くんが好きなんですよ。「時の過ぎゆくままに」とかいいんですよ。また聴きたいなあ。あと気づいたんですけど。どうやら僕は大野克夫サウンドが好きなようです。半田くんのライブに通うことで気づかされました(笑)

―休憩―

  休憩も終わりの頃、テディさんがBGMとして"新宿、泪知らず"をアレンジして弾いてくれました。これが凄かったんです。半田くんも音を残したかったと言ってました。控えていた楽屋は防音に優れていたので、ドアに耳をあてて聴いていたそうです(笑)

09.たそがれマイ・ラブ(歌・大橋純子/曲・筒美京平)

  森鴎外の「舞姫」をモチーフにしてるそうで、そのことを知った上で歌詞を改めて吟味して、一気に好きになったそうです。半田くんは女性の曲がよく似合うんですけど、これも良かったです。シャンソン風なのもぴったりあってました。

10.下宿屋(歌・森田公一とトップギャラン/曲・森田公一)

  ジャズ風でしたが、ギターの弾き語りでもいいかもなあと思いました。"下宿屋"について色々と語ってたはずなんですが、その語りは覚えてないんです。その代わり、"あっ、テディさんハイなんだ"と気づいた覚えはあります(笑)テディさんがすげー喋るんですよ(笑)このあたりから、ステージ上で半田くんとテディさんの掛け合いが増えてきます。いかにして親父キラー半田くんが団塊の世代やそれ以上の年代を落としてるのか、見えた気がしました。こうやって転がしてるんだなあって(笑)また、テディさんの即興アレンジも冴えてきたようで、伴奏が終わってすぐに"またリハーサルと違いましたね!?"と半田くんが言うほど(笑)リハーサルではコードどおりに演奏してるのに本番では全く違う弾き方になっていて、ピアノ演奏もする半田くんとしては歌っていても、どんな風に弾いてるのか気になってしまうそうです(笑)

11.学生街の四季(歌・岩崎宏美/曲・川口真)

  "歌謡見聞録"ではピアノの弾き語りで披露されたんですよね。僕としては、そっちの方が繊細で好みでしたが、これはこれで伸びやかで良かったです。終わった直後にテディさんが"短かった?(=アレンジで繰り返した方が良かった?)"と声をかけると、半田くんは"いえ、これで良かったです""(歌詞に四季が織り交ぜられているので)繰り返すとまた春に戻ってしまうので"と答えてました(笑)

12.いい夢みろよ(歌・西田敏行/曲・坂田晃一)

  "もしもピアノが弾けたなら"のB面。もともとはこちらがA面の予定だったそうですが、AとBがひっくりかえったとのこと。曲名を聴いた瞬間、柳沢慎吾さんが脳裏に浮かびましたが、当然ながら全く無関係のナンバーで、メロディがとても美しい素敵な曲でした。さすが"もしもピアノが弾けたなら"を生み出したコンビ。西田敏行さんの甘い声とマッチしていて、例えば西城秀樹さんに♪眠れ〜♪と言われても眠れないだろうと、モノマネを交えつつ語ってました(笑)

13.円舞曲(歌・ちあきなおみ/曲・川口真)

  とても変わった曲ですね。半田くんは童謡の"赤とんぼ"に似てると言ってました。歌っていて難しいと感じるし、ちあきなおみさんの凄さが分かるとのことでした。ちょっと演歌っぽいですかね。僕が到底歌えるような曲ではないと瞬時に判断できました(笑)
  半田くんの音楽ブログ「俺の聴きかた」にも書かれてましたが、事務所で久世さんと"円舞曲"を合唱したんですよね。半田くんは久世さんも歌謡曲に詳しいのは知っていたので、話す機会があれば、歌謡曲からアプローチしようと狙ってたそうで、そのチャンスが遂に到来!事務所で久世さんに「可愛い顔してるじゃないか」と呼び止められた時、川口真さんの作品が好きなんですよ〜という話で盛り上がり、先述した"円舞曲"の合唱に繋がるという…(笑)半田くんによると、当時60過ぎと20手前の二人が織り成す"微笑ましい"話だそうですよ(笑)
  久世さんの葬儀の時、阿久さんを控え室まで案内する役を出張って(笑)かってでたそうです。その案内先には都倉さんもいて、"あ〜!!アクトク!!"って興奮したそうで…(笑)

14.ブルースカイブルー(歌・西城秀樹/曲・馬飼野康二)

  半田くんのライブではお馴染みとなったナンバー。歌い上げるサビよりも、Aメロとか言うんでしょうか、それまでの抑えて語るように歌う箇所が好きなんです。♪あのひとの指にからんでいた〜♪とかね、胸がキュッとなると切なさと懐かしさが去来するんですよ。半田くんの優しげな声も良いです。半田くんには、先にあげた沢田研二さん以外に新御三家のナンバーもはまりますね。

15.ジョニーへの伝言(歌・ペトロ&カプリシャス/曲・都倉俊一)

  阿久作品と言えば無国籍ソング。"サムライ"といい歌詞に興味が惹かれ、小説のワンシーンのようですよね。このジョニーに伝言を頼まれてる友人は大変。"そこのところは上手く"とかいって丸投げされた上に、どんどんハードルが高くなってるんですよね…。彼女の行き先よりも友人のその後が気になって仕方ありません。上手く伝えられず、ジョニーに叱られてたりして…。歌い終わった後に、好きな歌は上手い演奏者に弾いてもらうのがいいと感想を述べてました。そこにテディさんから"なぜ?"というツッコミが入ると、弾き語りだと鍵盤と楽譜に神経がとられ歌に集中できないからだと返答してました。テディさんは即興でアレンジもしますが、歌い手がとても歌いやすそうに演奏されるんですよね。

16.また逢う日まで(歌・尾崎紀世彦/曲・筒美京平)

  テディさんの提案により急遽"KENT in person"で披露したバージョンに変更。2回の転調で終わるかと思いきや、テディさんのアドリブで3回目の転調が!このときの半田くんが、"えっ、まだ終わらないの?もしかして、転調がもう一回くる?"といった顔(僕には嬉しそうに見えましたが(笑))をしていて面白かったです。今回も然り、テディさんの即興アレンジに対する、半田くんの対応力はスゴイですね。テディさんも半田くんなら大丈夫だと確信してるからこそ、どんどん即興でアレンジしていくんでしょう。僕なら演奏を止めて、"お願いだからリハどおりにしてください"と泣きを入れます(笑)

17.メッセージ(歌・都倉俊一/曲・都倉俊一)

  半田くんが、阿久悠さん関連で出演した時に、必ず紹介してるナンバーですね。以前から知っていたけども、阿久悠さんが亡くなってから聴いて、捉え方が変わった曲だそうです。情感タップリに歌い上げて感動的でした。同じ都倉ナンバーで歌謡見聞録で歌われた"ガス燈"よりも、僕は"メッセージ"の方が好きかも。

  以上で全ての演目が終了。半田くんがテディさんへ、そして客席への謝意を表してライブも終わりました。

その外もろもろ

  ■トーク中、何度か"今日は真面目にいく。ふざける時ではない"と言い聞かせるように言ってました(笑)恐らく何か面白いことを思いついたんだけど、今日はそういう日ではないとストップをかけてたんでしょうね(笑)
  ■ライブが始まってしばらくしてから、半田くんがスタッフに熱くなってるのでタオルをリクエスト。差し入れられたのは、アンパンマンのミニタオルでした(笑)こういう場合、かならず柄が客席に向くようにして拭くんです。芸が細かい(笑)
  ■渚ようこさんのコンサートに行ってきたそうです。そこで名前は忘れましたが、シャンソン歌手を見れたとか話してました。半田くんのイメージとしては、シャンソン歌手は性別の域を越えた方が多いとか(笑)
  ■半田くんがあまりにも一風変わった曲ばかりセレクトするもんだから、いくら膨大な楽譜を蔵してるテディさんすらお手上げで、採譜屋にお願いしたものもあるそうです。まさにどんだけ〜(笑)
  ■"新宿、泪知らず"は自分で作っておきながら、"何知らずだったかなあ"とよく歌詞を間違えるそうです。
  ■今、半田くんが探している動画は、マックボンボン(ドリフ加入前の志村けんさんが組んでいたお笑いコンビ)と都倉俊一さんが司会の番組「ぎんぎら!ボンボン!」。"YOU TUBE"は当時の動画がみれて便利だけど、これだけは見つからないとのこと。ネット検索しても大して引っ掛からず、両人にとって触れられたくない過去なんだろうか…とも言ってました(笑)
  ■阿久悠さんに、最後のテレビ出演となった「通」を通して、自分自身のことを認識してもらえたのは、不謹慎な表現かもしれないがギリギリ間に合ったという思いはあったそうです。番組中にかけてもらった言葉は、生きていくうえでのモチベーションとなる、それぐらい自分にとって大切だとも話してました。

  以上です。公演から少し間を空けてしまったので、大雑把にしか書けませんでしたが、少しでもライブの様子が、半田くんの溢れんばかりの歌謡曲愛が伝われば幸いです。誤りや誤字脱字などがありましたら、掲示板で教えてください。ではお粗末さまでした(2008.1.9up)



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