実録「歌謡見聞録(3)―千家和也特集」



  三回目となる「歌謡見聞録」。本当ならば、ここで感想を一言で表現したいところなんですが、今回はちょっと表現しづらいので、順序だっておいおい書いていくことにします。
  二回目ではテーブルが取っ払われ、そして今回は遂にイスが取っ払われて、オールスタンディングとなりました。客層にもちょっと変化が見られて、確実に男性の比率が高まってます。全体の1割かそれ以上ぐらいでしょうか?男性客が目に付くほどになってきています。この変化の原因を知りたいんですけど、アンケートをとる以外に手段がないわけで、そんなことは到底無理だから諦めます(笑)でも、歌謡曲は老若男女に愛されるジャンルであるわけだから、よりあるべき客の構成へと近づいてるのかもしれません。半田くんもきっと嬉しいでしょう。そういえば、3連休の初日だからなのか、お子さん連れも多かったです。
  入場案内、撮影機器の持込チェック、やドリンクの受け渡しといった手際も、徐々に改善されてるのですが、今回も時間内に開演することはできませんでした。もう一息だと思うんですが…。ドリンクの受け渡しがネックなんですよね。この反省からなのか、10月公演からは開場が30分早まることになりました。
  マネージャーさんからの開演中の注意が終わるとスタートとなり、半田くんが登場。今回の衣装は、両肩に刺繍?があしらわれた水色のブラウスに、僕の語彙力では到底表現できないブルージーンズ。いずれもタイトで、体の線の細さが強調されてました。半田くんが客席に背を向けた時、客席の方々から"お尻が小さい…"という声が(笑)確かに驚きの小ささなのです。"お尻がない"といっても過言ではないぐらい。"正しい恋愛のススメ"で共演したウェンツくんが雑誌のインタビューで、半田くんのファーストインプレッションを"これまでに見たことないぐらい小さな尻"と答えていたのを思い出しました(笑)髪型はいつものごとく昭和風なのですが、現在、撮影中のドラマの関係で肩にかからない程度にカットされてました。トークは一段と冴えてて、薀蓄の披露はもちろん、客席に積極的に絡んでました。最前列でメモをしてらっしゃる方がいて、"何、メモってるんですか?"と突然声をかけ、それ以降、その方に何度か絡んでました。最後には"絡みすぎですか?"と自分で上手く落としてました(笑)また、前回は目力を存分に放ってしましたが、今回は曲調的にあわせて穏やかな表情が多く、ステージアクションも控え目でした。

  今回も半田くんの前説なしで、いきなりメドレーからスタート。曲数的には増えてるんですが、だからといってトークが減ったかというとそうでもない。むしろトークは増えたぐらい。前回はトークが少なくて残念だったんですけど(僕にとっては、トークも半田くんの魅力の一つなので)、今回はトークと歌のバランスが良かったです。一曲目の後に、時間的に上手くいけば良いことがあるかも…と自主アンコール(笑)を匂わしてましたが、無事そのとおりになりました。半田くんの時間のコントロールが上手くなってきてるのかもしれません。
  セットリストは以下の通りです。すべての編曲を半田くんが担当。

  01.千家和也メドレー/なみだの操(歌・殿様キングス、曲・彩木雅夫)1973年〜そして神戸(歌・浜圭介、曲・内山田洋とクールファイブ)1972年〜年下の男の子(歌・キャンディーズ、曲・穂口雄右)1975年〜青い果実(歌・山口百恵、曲・都倉俊一)1973年〜ゴッドファーザー愛のテーマ(歌・尾崎紀世彦、曲・Nino Rota)1975年〜そして神戸)
  02.さすらいのギター(歌・小山ルミ、曲・K.Manilov / J.Liebkind)1971年
  03.恋に首ったけ(歌・ブルーコメッツ、曲・都倉俊一)1973年
  04.憎いあなた(歌・小山ルミ、曲・都倉俊一)1972年
  05.雨(歌・三善英史、曲・浜圭介)1972年
  06.君が美しすぎて(歌・野口五郎、曲・馬飼野俊一)1973年
  07.バスストップ(歌・平浩二、曲・葵まさひこ)1972年
  08.私は泣かない(歌・雪村いづみ、曲・すぎやまこういち)1972年
  09.終着駅(歌・奥村チヨ、曲・浜圭介)1971年
  10.幼い子供のように(歌・坂本スミ子、曲・馬飼野康二)1971年

  こうしてみると、浜圭介さんとのコンビが多いことに気がつきます。千家和也さんは女性アイドルへの提供曲が多く、”としごろ”や"私の彼は左きき"を自分が歌うのは何か違うだろう(笑)ということで、選曲に悩んだそうです。そのせいなのか、コアな曲目が顔を揃えてます。また千家和也さんはアイドル曲だけでなく、演歌も提供してるといるのが特徴らしく、演歌もアレンジされて披露されました。
  前回も披露された2曲とメドレーを除くと、知ってる曲は"バスストップ"のみでした。"終着駅"と"雨"に関しては、それぞれ曲名と歌手は知ってたんですが、曲そのものは知りませんでした。メドレーは有名な曲を集めたというだけあって、「なみだの操」以外は全て知ってました。このように僕は惨敗ですが(笑)、客席の反応や雰囲気から察するに、リアル歌謡曲世代的にはマニアな曲ばかりが並んでたわけでもなさそうでした。気に入ったナンバーは「雨」、「君が美しすぎて」、「バスストップ」、「私は泣かない」、「幼い子供のように」。

01.千家和也メドレー/なみだの操(歌・殿様キングス、曲・彩木雅夫)1973年〜そして神戸(歌・浜圭介、曲・内山田洋とクールファイブ)1972年〜年下の男の子(歌・キャンディーズ、曲・穂口雄右)1975年〜青い果実(歌・山口百恵、曲・都倉俊一)1973年〜ゴッドファーザー愛のテーマ(歌・尾崎紀世彦、曲・Nino Rota)1975年〜そして神戸)

  今回は、比較的コアな曲がセレクトされてるので、まず最初に認知度の高い作品をざっと紹介して、千家和也さんを知ってもらおうという目的で、つまり千家和也さんの名刺的役割を期待して、このメドレーは組まれたそうです。千家和也さんの有名作品が矢継ぎ早に紡がれていき、スピード感の溢れるポップなメドレーに仕上がってました。これがね、なかなか盛り上がったんですよ。僕も大好きです。ただ残念なのは、一つ一つの曲がワンフレーズだけだったりと短かったこと。「青い果実」や「そして神戸」、「年下の女の子」あたりは、フルで聴いてみたい。特に「青い果実」が半田くんにフィットしそうでした。これまでに何度も言ってますが、半田くんには女性の歌や女言葉がとても似合うんです。
  半田くんの作成するメドレーは、まるで一曲の歌のように、つなぎ目が分かりにくくアレンジされていて、曲が代わったのに気づかないことが多いんです。例えば、"なみだの操"は原曲とは全く違いロック調にアレンジされて(リサイタル後に原曲を聴いたんですけど、その違いに驚きました)、メドレーから浮くことなく馴染んでました。"なみだの操"をロックにアレンジしようとする発想がスゴイ。

02.さすらいのギター(歌・小山ルミ、曲・K.Manilov / J.Liebkind)1971年

  ツイスト風にアレンジ。これまたリサイタル後に原曲を聴く機会があったのですが、原曲はモダンな感じなんですけど(モダンという表現が相応しいんのか全く自信がありませんが)、リサイタルでは、ディスコティックな感じに味付けがされて、テンポもやや速くなってたように感じました。原曲は25年前という古さをさほど感じさせないものなんですが、ツイストバージョンの方が僕には聴きやすかったです。曲のテンポが現代仕様になってるといいましょうか。
  千家和也さんは、非常に象徴的なタイトルをつける方で、"さすらいのギター"においても、"ギター"という言葉は詩中に一度も出てこないそうです。他に山口百恵さんの"冬の色"なんて酷いらしく、全くそれらしい言葉がでてこないとのこと。
  "さすらいのギター"は、ベンチャーズが作曲したインストゥルーメンタルに千家和也さんが詩をつけたもので、外国人による作曲なのにもかかわらず、非常に歌謡曲な仕上がりになってることに、半田くんは驚いたそうです。

03.恋に首ったけ(歌・ブルーコメッツ、曲・都倉俊一)1973年
04.憎いあなた(歌・小山ルミ、曲・都倉俊一)1972年

  以上の2曲に関しては、もともと千家和也さんではなく都倉俊一さんという切口から知っていたそうで、今回は千家和也特集なんですが、選曲理由は都倉俊一マニアの視点からとなってます(笑)この2曲からは、後に"狙いうち"やピンクレディーへと続く都倉サウンドの息吹を感じるそうです。なんてコアな選曲理由(笑)確かに、"憎いあなた"からは、半田くんが語っていたように、都倉節と言うんでしょうか、節々にピンクレディーを感じました。僕なんかは"都倉さんっぽいなあ"としか感じないんですけど、半田くんが凄いところは、"ぽいなあ"だけで留まらず、ここに"息吹"という作品の時間軸が加わるところですよね(笑)
  "恋に首ったけ"はシングルB面で、しかも、短期間ですがブルーコメッツに女性メンバーが加入していた時期があり、そのときの作品だそうです。素晴らしきかなマニアの世界(笑)言葉遊びが凝らされた詩だと紹介されましたが、"キラキラ"や"クルクル"といった擬態語が詩中に散りばめられていて面白かったです。

  今回のリサイタルは、今までのなかで最も"歌謡曲"していたように感じたんです。それは、これまでと比べて大きくアレンジされることなく、より原曲に近い形で披露されたからだと勝手に納得してたんですが、改めてセットリストを見返してみると、そうでもないんですよね。かなりアレンジされてるんです。では、なぜ"歌謡曲"を色濃く感じたのかというと、恐らくこの2曲が耳に残ってたからなんですね。2曲ともあまり手が加えられてなかったようで(半田くんからアレンジの説明がありませんでしたし)、当時の匂いを非常に感じたんです。どちらかというと2曲とも影の薄いナンバーだったように感じてたんですが、実はインパクトがあったということなんでしょうね。そして、僕はそのことに無自覚だった(笑)これが都倉マジック?

05.雨(歌・三善英史、曲・浜圭介)1972年

  ウエスタン調、もっと言うなればエンニオ・モリコーネ風にアレンジ。エンニオ・モリコーネといえば、そうリサイタル前日に放送された"シネマの扉"で取り上げられたばかり。今回のアレンジはそれがきっかけとなっていて、自分のことを"触発されやすいですね"と評してました(笑)また、"シネマの扉"のスタッフが来てたようで、その方々に向けてという意味あいもあったようです。この曲が、今回のなかでは一番面白い試みでした。"この原曲が演歌?本当に?"と疑ってしまうぐらい大幅にアレンジされてましたが、良い曲に仕上がっていて気に入りました。ちなみに、半田くんの歌いまわしに演歌入ってました(笑)
  「雨」をウェスタン調にアレンジしたという説明があると、客席から"ええええ!!"という声があがりました。半田くんは"無茶なんですけどね!"と、そのリアクションに応えつつ嬉しそうでした(笑)僕は原曲を知らなかったので、その流れにのることができず、やや寂しい思いをしたことを付け加えておきます。悔しい!

06.君が美しすぎて(歌・野口五郎、曲・馬飼野俊一)1973年

  前回の馬飼野俊一&康二特集でも披露されたナンバーですが、作詞家が千家和也さんだし、半田くん自身好きな曲ということで、今回も組み込まれました。アレンジも使いまわしという自己申告があり(笑)これがいいんですよねぇ。ムードがより一層ぐっとでてきますし、決め台詞の「間違いをおこしそうさ」がカッコイイんですよ。やはり野口五郎ナンバーは半田くんにはまります。若かりし頃の野口五郎さんを知らないんですけど、"野口五郎だ!"と感じてしまうのはなぜでしょう?不思議です。

07.バスストップ(歌・平浩二、曲・葵まさひこ)1972年

  アコースティックバージョン。半田くん自身、5本の指に入るぐらい好きな歌謡曲だそうです。最高でした。半田くんの素直で伸びやかなボーカルが耳に心地よいです。"一人でもつ鍵は重たい"というフレーズが印象的…と思いつつ聴いてたら、演奏後、半田くんが千家さんらしい言い回しとして、このフレーズを挙げてました。心の中でニヤリ(笑)

08.私は泣かない(歌・雪村いづみ、曲・すぎやまこういち)1972年

  これまたアコースティックバージョンでgoodでした。今のところ、アコースティックバージョンにハズレ無し。歌声がのびるわ、のびる。演奏後、ピアノの瀧本さんに"リハーサルと違うことをしましたよね!?"と問い詰める(笑)どうやら8分の8ところを12分の8で演奏されたらしい(まあ、僕には何がどう違うのかサッパリ分かりませんけどね)。半田くんとしては、いつ修正されるのかなあと思いながら歌っていたんだけど、結局、最後まで12分の8で通されてしまったという(笑)伸ばすところが長くなるので、しんどかったそうです。なるほど、すっごい伸ばすなあと感じたのは、そのせいだったわけですね。
  時折、目をつぶったりして情感たっぷりに歌い上げるんですが、その目をつぶった瞬間、これでもかというぐらいにハの字になるのですよ!タレ目は半田くんのトレードマークですが、ここまで見事とは…と曲とは違ったところでも感動していたのは内緒です。
  半田くんから、雪村いずみさんが有名な賞を受けた時に、この"私は泣かない"を泣きながら歌ったという逸話が披露されました(笑)毎度の突っ込みになるけど、なぜ22歳の君がそんなことを知ってるの?(笑)
  受賞といえば、昔、権威のある賞の授賞式は、いつもは表舞台にでてこない作詞家・作曲家も姿を見せるので、その風貌を知るチャンスでした。半田くんも授賞式で千家和也さんの姿を確認したそうですが、感想としては"あっ、なるほどな"(笑)半田くんの説明としては、作風と風貌が一致しない人がいるけど、千家さんは一致したということだそうです。……半田くん、昔の映像をどうやって探してきてるの?

09.終着駅(歌・奥村チヨ、曲・浜圭介)1971年

  うーん、最も印象に残ってないんですよ。実は申しますと、今までの経験から最後は超有名な曲がくるだろうと予想していたところに、僕的には中途半端にメジャーな曲がきてしまい、勝手にテンションを弱冠下げてしまった上に、きっと用意されてるであろうアンコールに心が奪われてしまっていて、集中力散漫になってしまったのです。申し訳ありません。もう一度冷静になって聴いてみたい。

10.幼い子供のように(歌・坂本スミ子、曲・馬飼野康二)1971年

  でました、自主アンコール(笑)客サイドとしては、これまでアンコールは時間的に無理だと知ってるので、はなからアンコールを要求するつもりがないわけですから、半田くん自らアンコールするしかなかったんですよね(笑)時間を上手くつかって1曲分の時間を捻出するのに成功。単純に嬉しかったです。
  アンコール曲は前回も演奏された"幼い子供のように"。千家和也さんの作品でもあったんですね。正直、アンコール曲が発表された時はちょっとだけガッカリしたんです。というのも、前回は派手な曲に囲まれたせいか、やや影が薄くて埋もれてしまっていた感があり、サビのちょっと変わったメロディーぐらいしか印象に残ってませんでした。しかしです。蓋を開けてビックリ。これが大盛り上がり。最後は半田くんの"マキを入れてください!"という号令のもとに(とても嬉しそうな声でした)、どんどんテンポアップ!客席もテンションアップ!最後はドラムに合わせて半田くんの大ジャンプ。間違いなく前公演時よりも今回の方が良かったです。なぜ前回はあまり印象に残らなかったんだろうと、不思議に思うぐらい。マキをいれるタイミングといい、アレンジってすげーなあと関心。あと、やはり独特のサビのメロディーは耳に残ります。半田くんが、このマキをいれるところはドリフみたいでしょと笑ってましたが、僕にはどういうところがドリフなのか分からなかったので、分かった体で笑っておきました(笑)

  以上で全曲終了。いつものやりとり(客席からの"もう終わりなの?"と言わんばかりの"エエエエ〜!"と、"後を引くぐらいがいいんです"という半田くんの弁明)が交わされ、そして半田くんからの〆の言葉で終わりです。ホーンセクションのうちのお一方が、ご本人が歌う"幼い子供のように"のバックバンドについたことがあるらしく(客席から驚きの声があがる)、"このような縁を大事にしていきつつ"とか意味の分からない〆でした。もちろん、半田くん本人がそのようにセルフ突込みをいれてました(笑)なんだかんだで〆の挨拶が終わると、客席から"投げキッス!"という掛け声が(完璧に恒例となりました)。半田くんは掛け声に応えて四方八方に投げキッス。そしてステージからはけていきました。これでリサイタル終了です。

  尻上がりの盛り上がりを見せた、今回のリサイタル。コアな曲からメジャーな曲まで幅広く揃えられ、とても楽しかったです。オールスタンディングは疲れましたが(笑)、その効果なのか、座ったままと比べて客席が曲にノリやすくなりましたし、かしこまらず気楽に聴いて欲しいという半田くんも気に入ったようでした。
  回をかさねるにつれて、作詞家・作曲家の作風というものが徐々に分かってきました。都倉俊一っぽさに感づいたり、今回の千家和也さんと比べて、なかにし礼さんはストレートで情熱的な言葉回しなんだなあとか、馬飼野康二さんはいつの時代でもポップな音を作る人だなあとか…。確実に健人チルドレン化が進んでます(笑)果たして次回はどのような出会いがあるのか、そして健人チルドレン化はますます進むのか、楽しみです。
  誤字脱字、誤っていることを発見したら、掲示板までお知らせください。放置しておくと恥かしいので。では、お粗末さまでした。(06.09.21up)



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